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『ノーザンライツ』 in 星野道夫著作集5 [おすすめ本]

星野道夫さんの本を読んでいると、思ってもみない記憶がよみがえってくる。

3510023

この間、母に「この箇所を読んでみて・・・」と星野さんの本を手渡したら、
そのまま寝るまで読んでいた。
気に入った本を何度も読むと、ある時を境に、得る印象や感覚が変わる。
ただ時間だけが過ぎただけで、という理由じゃなく、何かがすっかり違う。
当然のことながら、今の私が読む感覚と、今の母が読む感覚も全然違う。
本も深いし、人生もまた深いな、なんて思って母を眺めていた。

星野さんは、山での親友の遭難を通して、人間の一生がいかに短いものなのか、
そしてある日突然断ち切られるものなのかを知った、と書いている。
そしてその事故は、日々を生きる中、
生と死の接点と言う感覚を持ち続けることを教えてくれたと言う。

いろんな本で(『ババジ』『インド流!』等)、
人間が生きる上で忘れてはいけないのは、自然への畏怖だ、とあった。
日々を暮らしていく上で、自然は征服できない、ということを忘れずにいること。
信仰や感謝の想いは、だからそこから生まれてくるのだろう。

  「自分の持ち時間が限られていることを本当に理解した時、
   それは生きる大きなパワーに転化する可能性を秘めていた。」

人は死期を感じると、こういう思いになるのかもしれない。
生きている自己が、突然消えてしまう恐怖、その向こうの感覚・・・
生死をさまよった人は、きっとこれを急激に感知するのだろう。
悟った、というように解釈されるのだろうか。

彼の友人の死の悲しみは、星野さんをアラスカに向かわせたとある。
彼の生き方にかかわった、親友の死・・・。
そして、彼自身の死・・・。

  「クマだって人間を襲いたいわけではなく、できることなら避けたいのである。
   そもそもクマの事故の危険度は、都会における交通事故より低いのだと思う。
   アラスカの自然の中で野営をする夜、どこかにクマの存在を感じ、
   僕は少し緊張している。
   それはクマを通した、自然に対するとても原始的な畏怖なのだと思う。」

龍村監督も本に書いて、講演でも話していたけれど、
星野さんの魂は、選ばれた、ただ一つの道のりを旅し続けているように思える。


ひとつ、思い出話がある。
NZにいた学生時代、病気で急死した男の子がいた。16歳だったかな。
彼は寡黙なフィジー生まれのインディアン(インド人)。
彼が亡くなった後、彼のクラスメイトで親友だった、同じく寡黙でまっすぐな日本人の親友が、
彼の専門科目を受け継いで Polytech を卒業した。
その彼は、今日本の大手電機メーカーでロボット技術の最先端を担っている。
大きな力になった。

人の死とは、もちろん大きな悲しみと痛みをともなうけど、
星野さんの言う、「漠然として、脆い、生命の時間」として眺めると、
何かは消えることなく、たゆまず続いていくのかも。

「そいういうことなのかな・・・」

と、ふと思わせる星野道夫さんのストーリーです。



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コメント 2

aura-aura

星野さんの言葉は、自分をその光景、その時の場に引き込みますよね。
私も彼の本から、自然の人為では計れない強さを疑似体験し、そして「生」について考えを深ています。

自分の持ち時間が限られていること・・・マイケルも何か感知していたのかなぁなんて。
50歳にしてそしてあの細さでのパワーは神がかっていましたもの。
by aura-aura (2010-01-22 22:35) 

もののけ

aura-auraさん、いつも読んでくれてありがとうございます♪

星野さんの言葉の重み、伝わってきますね。
「生」の深さを目の前に差し出されている感じがします。

自分の持ち時間のこと、マイケルのこと私も考えました。
いろんなことが、あらゆる点でつながっていきますね・・・。


by もののけ (2010-01-26 01:29) 

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