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奇跡の起こり方 [オハイオ州リトリート 2009]

僕の名前はキャプセル。ジョージア大学で応用物理学の教授をしている。
育ったのはオハイオ州で、今は愛する妻と10歳の息子とジョージアに住んでいる。

今日は、僕が46歳で初めてアメリカを出て、ナリータでの滞在先も知らないまま、
ナハまでたどり着いた奇跡の旅の話をしよう。

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ある日、研究室で研究レポートを書いているとディーンがやってきた。
「やぁ、キャプセル、研究はうまくいってるかい?」
彼は、簡単に挨拶した後にこう言った。
「オキナワで、魚群探知機の調査があるんだけど、君に行ってもらうよ。」
オキナワは名前しか知らない。オキナワはジャパンにあるんだろうか。
アメリカを出たこともないし、パスポートさえ持っていない。

すぐに、パスポート申請と航空チケットの手配を開始した。わからないことばかりだ!
オキナワに行くには、ナリータに行くらしい。
ナリータで一泊して、ハニダからナハに行くようだ。
だからホテルを取った、ネット検索でヒットしたのをすぐに予約した。

出発の朝、ハーツランド空港へは電車で一人で向かった。
愛する家族と2週間の別れだ。僕はただ家族と別れることだけが寂しい。
この旅行のために購入した iTouch に、家族の写真とボイスを録音した。これで寂しくない・・・。

空港に着いた僕は、まずチェックインをする。機械でのチェックイン。
次は機内持ち込みのチェックインだ。
僕の前には5人ほどのアジア人が並んでいるが、誰かがトラブルを持ち込んだらしく動いていない。
チェックインは、こんなに時間がかかるんだ。

チェックインが終わり、次は手荷物チェック。しかし入口がたくさんある。旅行者の数もすごい。
入口の一つを選んで進んでいくと、またアジア人だ。そうか、僕はアメリカを出てアジアに行くんだ。

チェックインが終わったら、この巨大な空港を出発ゲートまで移動する。
国際線ゲートは果てしなく大きい。時間はたっぷりあるから迷っても大丈夫。
バナナを持ったアジア人とぶつかりそうになった。アジア人の女の子だ。

国際線のプロセスはよくわからないが、飛行機に乗りさえすれば、ジャパンにたどり着ける。
あっという間に搭乗時間が来た。
僕は、不安ながらも列に並ぶ。すると、さっきのアジア人の女の子が僕の前に並んでいる。
彼女は、実は機械チェックインの時からずっと僕の前にいたんだ。

「やぁ、気づいたかな。僕はいつも君の後ろにいるんだよ。」
「えぇ、もちろん。あなた、手荷物検査の時から後ろにいたわよね。」
「違うよ、その前の荷物チェックインから。僕は君の Guardian Angel。守護天使ってとこだ。」
「いいぇ、あなたは私をつけているのね。ストーカーはやめてちょうだぃ!」
僕たちは笑いながら、飛行機に乗り込んだ。

彼女が振り返って、僕に聞いた、
「あなた、まさか私の後ろじゃない?私のシートは31。」
「ちょっと待って・・・待って!僕は32だよ!」
「まぁ。じゃ、私が成田に着くまでちゃんと見守ってて、エンジェルさん。」

飛行機がこんなに疲れるものとは知らなかった。緊張していたのか、僕はよく眠った。
ナリータまで数時間になった時、僕はホテルの連絡先が書いてあるノートを探した。
あれ、ないぞ?
あぁ、そうか僕はまたなくしてしまったんだ。僕の悪い癖だ。いつもなくす。
でも、ホテルの名前は覚えているし、ナリータからすぐに行けるだろう。

飛行機がナリータに到着した。
僕は、例の彼女に向かって笑って叫んだ。
「君を、無事ナリータに送り届けたよ!」
「そうね。東京のど真ん中で会う可能性もあるわね。その時はよろしく。」
「いや、僕は明朝、ハニダからナハへ飛ぶんだ。」
「そうなの!では、旅のご無事を!」

僕たちは、違う列から飛行機を降り、もう会わないものだと思っていた。
が、最後の仕事、バゲージクレームが待っていた。
荷物を待っていると、ほら彼女がやってきた。
彼女は、「手荷物サイズだけど、今回はチェックインしたの。だから会えたのね。」
と言った。

荷物を待つ間、僕は彼女に東京で滞在するホテルの名前を告げた。
名前は、チィースン。チィースンホテル。最寄り駅はロッポンギーだった。
「六本木はすぐわかるわよ。私の家の方角だから、一緒に成田エクスプレスに乗りましょう。」
「ナリタイクスプレス?」僕は本当に何も知らない。
ホテルはすぐ近くだと思っていた。

「それで、ホテルはチィースン?本当に?スペルアウトしてくれる?」
僕は、CHISUN と書いた。
「なんだ、チサンホテル!でもチサンは六本木にはないはずだけど・・・」
彼女は、ケータイ電話を持って、すぐ誰かに電話した。
「タダイマ、my sis!!」
彼女の妹さんなんだ。彼女はすぐ妹さんに尋ねた。
「ネットつながってる?六本木に一番近いチサンホテルを探して欲しいんだけど。」

彼女はすぐに、ホテルの名前、電話番号、道のりを書いた。
それから、
「あなた、東京は何回目?」
僕は初めてだって伝えた。そして、東京のマップを見たことがないと言った。
彼女は、
「これが東京の地図、あなたはここ。成田は千葉なの。」
なんて大きいんだ!僕は一人で絶対迷ってしまうよ!

「これから、私たちは上野に行くわね。上野から乗り換え。
 私が案内できるのは、最後の乗り換え駅まで。
 あなたはそこから2駅乗って、3番出口に上がるの。そうすれば目の前にホテルがあるから。」

ウエノで乗り換えするとき、彼女は僕にオファーしてくれた。
「家族に無事を伝えたい?国際電話のカードがあるので、使いたければ。」
僕はアメリカの家に電話をし、家族に無事を伝える短いメッセージを残した。

親切な彼女だった。
僕は彼女に名前を聞いた、それには Generous という意味があるんだって教えてくれた。
日本人の名前は、性質まで表すんだな。
2週間のナハ滞在が終わったら、僕はきっと彼女にカードを贈るだろう。

僕は彼女と別れるまで、僕の人生について、家族について、
育ったオハイオ州とジョージア州、両親の住む農場や自然について語った。
彼女は、ちょうどオハイオ州とジョージア州を訪れてきたところで、
素晴らしい経験をしたから、僕にそのお返しをしたいんだ、と言った。

「僕が君の Guardian Angel だと思っていたけど、
 本当は君が僕の Guardian Angel だったんだね。」

僕は無事ホテルにつき、翌朝ハニダからナハに飛んだ。
ナハでの洋上調査は、台風の影響もあり大失敗に終わった。調査器材も大破した。
だけど、僕たち調査チームの命が残っていることが、何よりも救いだ。

調査は失敗だたけど、素晴らしい仲間たちとオキナワの文化や食事を満喫して、
僕はジョージア州に戻った。

これが、僕の奇跡の物語。
神様、僕の元にエンジェルを送ってくれてありがとう。
僕は人生で初めての海外出張で、順調にナハまで辿り着き、
海上調査でも命を落とすことなく、愛する家族の元に帰ってこれた。
Thank you Angels for protecting me...


*・゚・*・゚・*.*・゚・*・゚・*.*・゚・*・゚・*.*・゚・*・゚・*・゚・*. 


ぷぷぷ、もちろんバナナを持ってるアジア人は私!
私にとってこれは奇跡でも何でもなく、アメリカ旅行での癒しと愛のお返しだったんだけど、
彼からすれば、これは奇跡なんです!
物事はおもしろい感じでつながっているのね。
個人名と大学名は仮称。もののけ初ミニ小説でした[るんるん]




タグ:奇跡
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mizmaki

おもろかった。generousのとこでやっとわかったよ。
カードがきたの?
by mizmaki (2009-11-06 22:24) 

もののけ

そこでわかったか。generousとか、自分で言っちゃうって?

内容は、私たちが電車と電話とメールでやりとりした内容!
えへ、結構コンタクト取ってるって!
でね、今、何やら送ってくれてるらしいのよ。
何が到着するのか楽しみ~♪
by もののけ (2009-11-08 00:09) 

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