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5. 滞在延長。サンクチュアリの日常(5/0-6) [ニューメキシコ州リトリート2010]

ワイルド・スピリット・ウルフ・サンクチュアリでのリトリート4日目。当初の予定日数を変更し、1日延泊することになった。


たった数日滞在しただけなのに、私もこの場所を去ると考えるだけで heart breaking... 心が痛かった。しかし私たちだけが特別な想いを抱いているのではなさそうだ。この場所で出会った人たちも、かつてこの土地に訪れたことがきっかけで永住したのだと話していた。

最後の日。
サンクチュアリから車で1時間ほどの場所、かつてナバホ族が住んでいたといわれる岩地を通って、300エーカーの売り地を視察しに行った。

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現地に着いて車を降りると、そこは天国のような光景・・・。光のベールがかけられたようで、艶の良い馬が何頭も近づいてきた。周囲に建物がまったくなく、ただ延々とエル・モロ国定公園のような壮大な景色が広がっていた。あまりの壮大さにその敷地すべてを目視することができなかった。
前々日にレイトン・クーガー氏から自然界のオーラを見る方法を教えてもらっていたので、その大地のオーラを見ようとしたが、努力する必要もなくエネルギーは大地から立ち昇っていた。


帰り道に、ナバホ・ネイションの中に位置するグロサリーストアで夕食の買い物をした。ここにいる人は、ナバホ族の血をひく民族ばかりのようだ。ネイティブ・アメリカンの顔つきがモンゴロイドに似ているとは言え、私のようなアジア人顔や、一緒に参加した肌の色が薄いトムなどは、明らかにここに属さないように見える。一方、デスーザ夫妻は完全にこの地になじんでいた。

CIMG4426.JPG


翌朝、私以外の参加者がサンクチュアリを去った・・・そう、私はサンクチュアリを去ることができず、滞在をさらに延長した。数日前のサンクチュアリ内の撮影に関わっていたため、日本語ができる編集者が一人は必要だったということもあるが、一番の理由は単にここを去ることができなかっただけ。

みんなが出発した後、しばらく三頭の狼の前に座っていた。クーガー氏が言うように、彼らを見るのではなく、声を聴く・・・。人間の言葉のようにコミュニケーションはできなくても、近くにいるだけで癒される気がする。

午後からはクーガー氏と編集作業に入った。彼はこれまでもYouTubeに多くの動画を編集して掲載しているので、編集作業はなれたもの。その動画の一つはアニマル・プラネット(アメリカのテレビ番組)のディレクターの心を掴み、私の滞在中に出演がほぼ確定したとの連絡も入った。

遅い午後、仕事を終えて一人キャビンに戻った私は、不思議な光景を見た。上空に向かって雲が徐々に黒くなっているのに、下の方は晴天の青空。上空で雨が降っているのに、大地に雨は落ちてこない。

CIMG4494.JPG

その雲が去ると同時に、夕空に美しい二重の虹がかかった。夕焼けが濃くなっても、虹は強い光を放っていた。

CIMG4503.JPG
 (ステイしたキャビンにかかる虹)

と、日が沈むとすぐに嵐になり、閃光と雷鳴が大地をかけぬけていった。美しさと荒々しさは共存する。



翌日は早朝から、アルバカーキから2時間の場所へディンゴのレスキューに向かった。政府の動物衛生課から、貧困地帯で生まれたディンゴをレスキューするようにと依頼があったのだ。

CIMG4520.JPG

職員は「危害を加えない動物」と事前に報告していたが、7匹の赤ちゃんを保護した後、大人の4匹が不安で暴れてしまい、クーガー氏の右手甲に傷をつくった。ディンゴは不衛生な場所にいたため感染の可能性は大だったが、職員がディンゴに恐れおののいている中、彼は流血しながら2匹のディンゴの恐怖を取り除いてレスキューした。傷を負った手では残りの2匹を保護することができず、後日もう一度そこに戻ることになった。

それからすぐにアルバカーキの緊急病院に向かった。手の甲は徐々に腫れてきているが、緊急病院には生死をさまよう救急患者も訪れるので、クーガー氏は当然のごとく自分の順番を譲った。クーガー氏は数年前に両足を狼に噛まれるという大怪我をしており、何が緊急かをわかっている。結局2時間後に2つ目の病院で処置が行われたが、彼は涼しい顔をしていた。

すでに暗くなった夜にサンクチュアリに戻ってきた私たちを、スタッフ全員とクーガー氏の家族が迎えた。ディンゴには清潔な水と食餌が与えられ、その晩はそれぞれのスタッフが一匹ずつ赤ちゃんのディンゴを担当し、夜を過ごした。



滞在最終日もサンクチュアリの日常を過ごす。今日は、ウォルマートSupercenter(通常よりも大規模店)で賞味期限切れの「食品廃棄物」を引き取る。賞味期限が切れたとしても、狼や動物にとっては大切な食餌となる。サンクチュアリはNPOで、寄付金やウルフ見学ツアーで収入を得ているので、こういった民間によるサポートは本当に有り難いのだそうだ。

裏口からウォルマートに入ると、担当の職員が迎える。専用の大きな冷蔵庫には、賞味期限切れの食糧が入った巨大な樽が6つ置かれていた。ひとつの重さはおよそ40キロ。この週は樽6つを引き取る。これらはサンクチュアリのボランティアスタッフ6名がかりで開封され、栄養を調整してブレンドされ、巨大なパテとなり冷蔵庫に蓄積される。(サンクチュアリは動物たちに栄養ある食事を与えることをミッションの一つに掲げており、食事回数や量などもできるだけ野生に近い状態で提供される。)

クーガー氏に、「各州のサンクチュアリや動物園が、これらのスーパーで日々出される食品廃棄物を有効利用できないのか」と尋ねると、「各州にこのような巨大スーパーがいくつもあり、それでも食品廃棄物は処理しきれない。そして、人間の飽食は動物により解決するものじゃない。」と答えた。



日常には、同じ「今」がないことに気付く。毎日のルーティンワークがあるとしても、同じことは起こらない。
オフィスで過ごす一日。畑で作業する一日。家族と過ごす一日。いろんな一日の中に、こういう一日の過ごし方もある。単にそれだけのことで嬉しくなった。毎日はこういったことの連続。そして、サンクチュアリの毎日も、なんてエキサイティングなんだろう!

保護された野生動物たちと過ごすのは決して簡単なことではないけれど、それでもこの土地にやってくる人たちや、この場所をサポートする人たちの愛の深さに触れた最後の4日だった。

CIMG4409.JPG
 (思いがけず撮った写真。木の間にハートが・・・)



次がニューメキシコ最後のブログです[ペン]






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素子

いつもステキすぎる経験をしてるヒロ。

今、先住民に興味を持ち始めているので、楽しく読ませてもらったよ。オオカミ、カッコいいね〜。

日本にもいたはずなのになあ。。。

by 素子 (2010-09-21 22:38) 

Hiroko

素子chan

いつも読んでくれてありがとう♪
オオカミ、ほんとにかっこよかったよ。凛とした立ち姿が魅力的でした!

先住民族について学ぶと、わたしたち人間がみんな違って「同じ」ことに気付くね。私はポリネシアから日本に流れてきたと民族について興味がある。各地の信仰に関しては、ジョーゼフ・キャンベルの宇宙神話が面白かったよ。私が知ってるのはそれくらい^^

長~い宇宙の歴史の中で人間の歴史は短いけれど、私たちの生きているこの瞬間こそが何よりも大切な時・・・。

今度、先住民族の話をエクスチェンジしよう!



by Hiroko (2010-09-24 19:09) 

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